音質改善事例|動画音声に入ったiPhoneの着信音除去
「音楽のリフォーム」という新サービス認知度拡大のために、継続的に無料トライアルサービスを実施しています。自らの音楽パフォーマンスをYouTubeにアップしているアマチュア・ミュージシャンが対象。ギターを始めて1年未満の初心者から、子供ギタリスト、本格活動中のインディーズ・アーティストなど様々な音楽家がユーザーになっていただいている。
先月は大規模なネットプロモーションに打って出たこともあり、多くの申込がありましたがその中で当サービスへの挑戦とも受け取れる、面白いトライアルユーザーが現れました。
音質改善サービスのプロモーションをしていたらYouTuberから挑戦状が….
商品レビュー専門「動画解放軍」というYouTubeチャンネルの管理者の方から、当サービスに無料リフォームの申込がありました。YouTubeにUPされている音楽動画5分を無料で実施するという内容なのですが、リフォームを依頼されたURLを確認すると下記の動画でした。
(全文書き起こし)
商品レビュー専門です。
今日、ネットの広告でHybridSoundReform.com(ハイブリッド・サウンド・リフォームドットコム)音を直してくれるサイト、その案内を見ました。
YouTubeにアップロードした動画で5分までの自分たちで録音した音楽、それを修復してくれるみたいですね。
音楽っていうか、自分たちのバンド演奏とか吹奏楽とかの演奏、まあ正直音が良くないです。演奏が下手なわけでもないし現場で聴いていた人はちゃんと聴こえているのに、まあアマチュアのバンドの録音はアマチュアの音なんですよね。ドラムがバンバン響いていて、それでなんか声にパンチがない。大体そんな感じ、ドラムが「スッカン、スッカン」って感じで鳴ってる。あの音なんですよね。
「あ、これアマチュアの録音だろ」一発で分かるんですよ。まあ、それとあとちょっと良くしようと思って、PAの卓からラインで引く。そう考える人もいますけど、なんか音が変なんですよね。バンドやっている人に聞いたらギターとかアンプから出している音、そういう音はPAからはそんなに出さない。だから音が悪いみたいな、そんなことを言っていましたね。
例外として武道館級のライブだったら、PAのほうからほぼ100%出てるからライン引き、いいみたいですけど、ちっちゃなライブハウスだとほとんどPAのほうにギターとかが入っていない。そう言われているんですよね。
それと私のこの声、これもハイブリッド・サウンド・リフォームドットコム、そこに依頼するためにアップロードしますけど、いつもこのマイク(コンデンサーマイク)を使って録っているんですよね。このマイクにICレコーダーを接続して録ってる。でも今日は何も繋げていないですね。ビデオカメラのマイクで収録していますね。まあ最悪な音ですね。
ここ(コンデンサーマイク)で収録するとノイズも少ないし、良い音で録れる。でも、今日はビデオカメラのマイクを使ってパソコンの電源、いつも切っているんですけど、これも入れてる。そんな状態なんですよね。あとギターとか色々楽器が置いてあるんですけど、喋るとなんか弦の音がするじゃないですか、「ポーン」とか、って。こういう音も不快な音になるんですよね。
それも、抑えられるのかな?処理をかけるとどうなるのかな?それに期待していますね。
正直、ビデオカメラで録った音っていうのは悪いんですよね。「じゃあ、良い音で録れば良いだろう?」「レコーディングの環境を整えればいいだろう?」って言われそうですけど、まあ私みたいに収録を前提にしている人でしたら、このようにマイクを設置して録音すればいい。
でも、ライブとか色々な人が出ているじゃないですか。だからその人のために色々やってくれなんて無理なんですよね。だから、自分のビデオカメラに普通に録るしかない。場合によってはPA卓をCDなんかに録音してそれをくれる。そのくらいなんですよね。そんなに自分たちのために大掛かりなことは出来ないですよね。
それを仕方なく録音してしまった。そういう音を良くする。あとは、自分たちは音楽の演奏に特化したくてレコーディングとかに興味がない、技術も知らない。そういう人だったらお金を払えば奇麗にしてもらえる…。いいじゃないですか。
そりゃ理想はこういう風にマイクを立てたりとかして良い音で録る。それが一番ですけど、出来ないこと多い、あと、やりたくない。色々な理由はありますね。
それと今回これiPhoneから着信音を鳴らしてみます。こういう音も不意に入ってくる、こういう音も取り除けるのかな?(マリンバの着信音)こういう音、どうだろう?取り除けるのかな?無理なのかなこれは流石に。
もう一回やります。(マリンバの着信音)こう、しゃべっている間にこのマリンバの音が入っていた場合、ちゃんと取り除けるのか?これ取り除ければすごいですよね?
この環境、悪いところは後ろにギターとか置いてあって、声出すと後ろで「ポーン」と音が出る。そういうところなんですよね。これをクリアにして私の声をアナウンサー級のこの近くのマイクでしゃべっている声に、そういう音に出来るのかな?それに期待していますね。まあ、音楽じゃないですけど修復してもらいたいですね。
修復してもらえたら、それをちゃんと動画にします。この収録の音がこんなに良くなりました。そんな感じで収録していきます。商品レビュー専門でした。
この動画における音声ノイズ除去の課題
とても分かりやすい説明でサービスを紹介してくれたのですが、初回アプローチがこの動画とあって、これは断れない素敵な挑戦と受け止め、このオファーをもちろん快く引き受けました。せっかくならバッチリ音を直してアピールしてもらおう。
<音質改善の課題>
①継続的エアノイズ/パソコンのファン、反響による部屋鳴り
②各所突発的エアノイズ/声に反応して響くギター、カタっという物音など
③混入音声/Phoneの着信音(はっきりとした取り除きたい音)
④ペラペラの音を太くする/オフマイクビデオのペラペラな音から、アナウンサー級の太い声に
音質改善方法の具体的な手順
①から③のノイズ除去においては最新の音声補正ソフトであるizotope社のRX-5でほとんどの作業を行い。仕上げの音作りに関してはマスタリングソフトのozone7を使用した。
①YouTubeからの動画音源ダウンロード
clipconverter(クリップコンバーター)というサイトを利用し、動画をダウンロードする。MP4形式でファイルをダウンロード。
②音声の抽出とアップコンバート
DAWソフトCubase8にてMP4ファイルを取込み、オーディオ部分をwavファイルとして抽出。読み込み時のプロジェクトを96kHz/24bitにて設定。iPhone着信音の除去などかなり難易度の高い処理が予想されるため、高解像で処理を行うためAAC音声をハイレゾ解像度にアップデート。
③RX-5でのノイズ除去
Cubaseでアップコンバートした96k/24bitのwavファイルをスタンドアローンで開いたRX-5で取込み作業を開始。この時点で1〜2回、細かく検聴を行い、具体的な作業プランの段取りを行う。
a)継続的なバックノイズ(ここではパソコンファンの音)の除去をプラグインdenoiseにて行う。denoiseは音声の雑音部分の成分を解析し、その成分を抜いてくれる優れもの。しゃべっている間ではなく、なるべく無音(ノイズしかしない箇所)部分を探し、そこを解析する。その後、全体をセレクトしクリーニングを実施する。かかり具合の調整が大幅にできる。強烈にかけると完全に除去できるが、他の音声破壊が多くなり違和感ある音質になりがちなので、薄めに設定して繰り返し全体をクリーニングしていく。
b)突発的なノイズ(声に反応するギターやガサっという物音)の除去をSpectralRepeir(スペクトラルリペアー)というプラグンで取り除いていく。これもボタン一つで簡単に除去できるものではなく、スペクトラグラムという下記のような音声成分の解析データを細かくみて、特定の音を判別し除去したりぼかしたりして自然な仕上げを目指します。これは音版の絵画修復士に近い、地道で忍耐のいる作業。分かりやすい突出したノイズは除去もしやすいが、他の音と混ざってしまうような音色はかなり難易度が高い。動画にもあるが、声に反応したギターの「ポーン」という音は人間の音声に馴染んでおり、苦戦した。
C)Bの作業の延長上にあるが、iPhoneの着信音除去はMCの声と重なっていない部分ははっきりしているので除去はそこまで困難ではなかったが、声と同時に馴染んでしまう部分の修復は完全に終えることができなかった。これは除去技術というよりはスペクトグラムの地道な解析がとても大事。締め切りのない芸術作品ならいくらでも時間をかけられるが、納期がある外注対応にはその精度が安定しない現実がある。着信音除去を命じられた音声は3つのセクションに渡っているが、3つめはどうしてもMCの声を回避して処理することができなく、修正音声に少々の違和感が残った。
D)マスタリングソフトOzone7で全体音声のパンチを上げる作業。アナウンサー級の音質にするために通したプラグインは6つ。
1)リバーブ/RX−5でのエディットで無駄な部屋鳴りを抑えるために、残響成分を除去した。しかし不自然さが残るため、小さな部屋をシミュレートしたリヴァーブを軽く入れることで、空気感を擬似的に生み出す。
2)「Transoent Master」 Native Instrument社から発売されているプラグイン、こちらは音像を前に出す効果がある、実際にビデオカメラのマイクから遠い位置で収録されているマイクまでの距離感を調整。
3)EQ イコライザーで全体の音質調整を行う。Ozone内蔵のEQはMatch機能があり、参考にする音声の周波数帯を解析し、編集する音声をそれに近づけることができる。TOKIO HOT 100のクリス・ペプラーのDJが収録されているYouTube音源を解析し、マッチングさせる。上の画像はそのプレビュー。音楽制作では通常ありえない、超絶的なEQ設定が効果的だった。
4)UA1176 Legacy プロが使用するレコーディングスタジオのヴォーカル収録などに用いられる定番コンプレッサー。これで音声全体の圧縮をかけ、さらに音像が前にでる効果を狙う。
5)DynamicsというマルチバンドコンプとMaximizerといういずれも圧縮系のエフェクトを少しづつかけることで全体的に前に出た迫力ある声を再現した。アナログエフェクトだとノイズの問題もでてくるが、デジタル時代ならではの補正方法。
リフォームした音声を納品した後、比較動画をUPしていただきました。
(動画4分45秒地点)iPhoneの着信音除去は3フレーズ、自己評価は2勝1敗。
かなりの高評価をいただいた。小規模事業者がサービスを告知するにはどうしても、他人からのレビューや評価が課題となりますが、売り込むべきユーザーに対して効果的なレビューをしていただき、大変感謝しています。
多くの方が動画によるセルフコンテンツが増える中、画期的サービスを提供しています。難点はそもそものモニター環境がまちまちであること。スマホのスピーカーでしか再生しない人には、正直その技術レベルが体感できない。
見えないサービスを提供する、難しい挑戦はまだまだ続きます。
価格:36,504円 |
最後までお読みいただきありがとうございました。
音楽Hi-TeQ
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