マドリード国際映画祭2023でベストサウンドデザイン賞を受賞
マドリード国際映画祭2023で受賞
ハイブリッド・サウンドリフォームを運営している山川@HSR_YBです。
2年ほど前にお仕事として参加させていただいた自主制作映画作品、
岡崎育之介監督作による「安楽死のススメ(邦題)」
が、マドリード国際映画祭2023にてベストサウンドデザイン賞を受賞しました。
【主人公が”沖縄二泊三日安楽死ツアー!!”に参加するコメディ映画】
日本人男性の平均寿命が81.4歳。 今の俺が27歳。てことは残り54年てこと。 ちょうど三分の一にきたってこと。 もう三分の一が終わったってこと。で、残り三分の二が、これまでの三分の一より楽しい確率なんてかなり低いと思うんだ。だって、最初の三分の一面白くない小説、その後最後まで読まないでしょ? 大体の人がもうそこでやめるよ。「あ、もうこれ読まなくていいや」って。 じゃあもう、そこでやめた方がいいな、って思って。 早いうちに閉じちゃった方がいいな、って思って。 ──だから僕は、死んでみることにした。
◆あらすじ◆ 主人公・正は死ぬことにした。 友人や相談窓口、自殺防止支援団体など様々なところに出向くが、皆一向に止めるばかり。そうじゃない。僕は自分で選んで、健全に死を選ぶんだ。集めたチラシをふと見ると、「沖縄二泊三日安楽死ツアー!!」という文字を見つける。正はツアーに参加するため、友人に “片道料金” の金を借りて沖縄へと旅立つ。そこで出会った安楽死推進団体「桔梗の会」代表・雨野川。そして、ツアーのもう一人の参加者・氷川。 彼らと時間を共にし、正は「死とはなにか」に向き合っていく。ツアー最終日、正はついに安楽死の飲み薬を前にする。正はそれを飲み、本当に自分の人生の終わりを選ぶのか。それとも、ツアーの参加をとりやめ、生を選ぶのか。 死ぬこととは。生きることとは。そして、命とはなにか。生きとし生けるすべての者に対峙する、美しき人間賛歌。
出演: 石原滉也 田中陸 海老沢七海 岡﨑育之介 中山慎吾 齊藤隼平 宮本伊織 義山真司
川島隆生 轟雅子
音楽:永太一郎 撮影:佐藤里央 助監督:中村光寿 整音:山川貴基 協力:神原健太朗
監督/脚本/編集:岡﨑育之介
※Official YouTube予告編より転載
国際映画祭におけるサウンドデザイン賞とは?
国際映画祭における最優秀サウンドデザイン賞は、映画の音響と音楽に関連する技術とクリエイティブな要素を評価し、優れたサウンドデザインに贈られる賞。この賞は、映画の音響効果、音楽、ダイアログ、環境音、録音技術、ミキシング、編集など、映画の音声に関するあらゆる側面を対象としています。
以下は、最優秀サウンドデザイン賞に与えられる要因と評価基準の一般的な例:
- 音響効果と環境音の創造性: 映画の中で特別な効果音や環境音をどのように創り出し、物語やシーンにどのように組み込んだかが評価されます。例えば、戦闘シーン、サイファーアクション、SF映画などでの特殊効果が含まれます。
- 音楽の選曲とオリジナル楽曲: 映画の音楽は、映画の雰囲気や感情を伝えるために非常に重要です。賞は、音楽の選曲や映画に特別に作曲されたオリジナル楽曲にも注目します。
- ダイアログのクリアネスとリアリティ: 映画内のキャラクターのダイアログがクリアでリアルであることが評価されます。観客がキャラクターのセリフを明確に聞き取り、感情を共有できることが大切です。
- 音響ミキシングと編集: 音声要素のミキシングと編集技術も評価されます。音楽、ダイアログ、効果音などがバランスよく組み合わさり、映画全体のサウンドトラックが一体となることが求められます。
- 技術的な革新とクリエイティビティ: 最優秀サウンドデザイン賞は、技術的な革新やクリエイティブなアプローチを高く評価します。例えば、新しい録音技術、音響処理、3Dサラウンドサウンドなどが取り入れられた場合、その影響が評価の対象となります。
これらの要素が組み合わさり、映画のサウンドデザインが優れていると認められた場合、最優秀サウンドデザイン賞が贈られます。映画制作においてサウンドデザインは重要な要素であり、賞はその重要性を認識し、優れたサウンドデザイナーとそのチームを称えるものとのことです。
マドリード国際映画祭2023にて参加作品がベストサウンドデザイン賞を受賞。
— Y-B / サウンド🛠リフォーム a.k.a CeraMiXX (@HSR_YB) September 10, 2023
岡崎育之介監督作「安楽死のススメ」
私は整音・効果・ミックスなどを担当。音楽や選曲などサウンドトータルでの評価とのこと。一翼を担えたことが自信に繋がりそうです。 pic.twitter.com/wq486FeIED
私が担当した整音・効果・ミックス作業
作品のクレジットには「整音」担当となっています。上記で説明した評価基準で用いられた項目では
3:ダイアログのクリアネスとリアリティ
こちらが最も作業分量が高かった項目です。セリフを捉えていたピンマイクやガンマイクはほぼ全ての音声素材に手を入れました。またこの作品は監督処女作ということもあり、創作の勢いのまま音声スタッフなしで撮影をアクティブに進めたとのことで、ピンマイク数も限られ、シーンによってはガンマイク1本がメインになる部分もありました。
野外ロケも多いため、多くのセリフには環境音も混じっており、信じられないくらい細かな処理を繰り返しています。
また、1:音響効果と環境音の創造性
についても、臨場感を決定づける環境音についても作品全体の品質をコントロールしました。ガンマイクから拾った環境音の適正な整音処理を施し複数素材のバランスを考慮したミキシングがなされています。
街中や室内、海岸沿いのロケが中心であり、特殊な音響効果は必要ありませんが、演技の心情やリアリティーを高めるためのコントロールが必要であり、その場でセリフとともに収録されたガンマイクから入る環境音の整音バランスを取りながら、各所で新たな合成音を付け足したり響きを足したりという絶妙なバランスでのミキシングを行ないました。
クライマックスシーンでの焚き火や激しい波の音、その中で印象的な台詞の説得力を高めるための工夫が随所に盛り込まれています。
またコミカルな要素もある作品のため、あるシーンでは役者さんの声にコミカルなエフェクトも足して遊び心も演出させていただきました。
これからどこかで作品を観劇される方もおられるかもしれませんので詳しくは記しませんが、ちょっと反則技的な台詞差し替えなども実は行なっています。
ワールドクラスの音声エディターが外注いただけます
私は一度もポストプロダクションには所属したこともない、プロ側の人間から見れば怪しげに映る独立系サウンドエンジニアかもしれません。ふと脱サラして独自の音質改善サービスで生計を立てています。通常は素人が録音したボイスメモなど、プロが滅多に耳にしないような粗悪な音源を日々修復しています。
元々、映画は趣味で観劇する程度でしたがiZotopeRXアプリを中心とした高度なノイズ除去や音声修復をこなすうちに、映画監督や関連プロデューサーから声をかけられ、ドキュメンタリーや自主制作映画作品に携わるケースが増え、今に至ります。
世界中から数百のエントリーがあったであろう国際映画祭で音づくりでを最高評価いただいた作品に携われたことは、大きな自信になりました。最近は劇場公開用の5.1chサラウンド編集も対応開始しました。ぜひ映画制作をされている方からのお仕事のオファーをお待ちしています。
ハイブリッド・サウンドリフォーム・ドットコムのオフィシャルサイトよりお気軽にお問合せください。