録音データに混入した厄介なノイズ
プロクリエイターに限定せず一般向けにも高度な音声修復サービスを運営するサウンド・リフォーマーの山川です。ノイズ除去の依頼で最近増えているのがiPhoneなどのスマートフォンによる電波ノイズです。
ライブハウスなどの演奏をリニアPCMレコーダーで録音した際、iPhoneが近くにあると録音データに結構酷いノイズが乗ってしまうという事例があるようです。いわゆるマイクが拾った客席の環境音のノイズではなく、音声データ自体を破壊するような非常に強いノイズです。
録音した演奏をバッチリ妨げる不快なノイズの軽減作業を行いました。
バンドのライブ録音などで活用されるリニアPCMレコーダー
リニアPCMレコーダーはボイスメモなどに利用するICレコーダーの高音質。安価なICレコーダーに比べ、感度のいいコンデンサーマイクが搭載され、バンド演奏などの高い音圧にも耐えられる音質にこだわった設計になっています。
クライアントからの案件は、ライブハウスの客席で演奏をエア録音されたものに、何分ごとの周期で「ブルルルル—–」という録音された演奏を台無しにする、
酷いノイズが混入して、取り除けないか?という相談でした。(下記音声サンプル参照)
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ご試聴いただけましたか?すごいノイズでこれは無理だと思いますよね?幅広いノイズ処理を行う僕でさえ、正直少し厳しいと考えていました。
ほとんど修復不可能と感じる「はっきりとしたノイズ」なのですが、完全と言わないまでも、ほぼ違和感がない程度にまで軽減処理し無事納品。クライアントに喜んでいただけました。
音声ノイズ除去の先端技術が詰め込まれたiZotopeのRX
RXはあらゆる音声ノイズに対応する多くのプラグインモジュールを詰め込んだ、
音声修復ツールです。当方は最新のプロ向け最上位版 RX-6 Advancedを使用しています。音声成分を画像化するスペクトログラムメーターに直接加工し編集していきます。
混入したノイズの成分
上記の画像は約0.8秒間のデータです。細かな縦のオーディオを分断した部分を数えると15本、確認できます。何か連続的なノイズ音ではありますが、映像化されるとはっきりします。一般的な録音でも「プチっ」と瞬間的にオーディオデータが切れるエラーがクリップノイズとして現れますが、その現象に近く、これが短いスパンで連続的に起こっていると解釈しました。クリップノイズには対応策があり、iZotope RX-6 Advancedのモジュール、De-clickを利用します。
Single Bandのアルゴリズムを使用
これで細い縦線のノイズは結構がっつりと除去できます。ただし、中央左部にある太い成分(ズザっ)という瞬間的なノイズはデータの破壊が大きく、
Spectal repair などでなるべく目立たせないように処理します。このモジュールは選択部分のノイズ成分を解析し、隣り合う音声を再合成するそうなのですが、グラデーションのように「ぼかす」というニュアンスに近い。
こちらがノイズ処理した音源になります。
まとめ
いかがだったでしょうか。このような無理そうなノイズに日々向き合って、少しでも良い「音」を楽しんでもらう仕事をしています。もちろん難しい場合も多いのですが、クライアントにとって大切な音源を救済できることに生きがいを感じています。最近は自主制作映画の整音が増加傾向にあります。ご依頼、ご相談はこちらのサイトから承っております。なんとトライアル無料です。