自宅マスタリング対応|モニタースピーカーのセッティング手順
自宅で音楽制作するクリエイターにとってモニタースピーカーは必需品。普通の部屋で使うときは設置場所の制約も多く、深く考えずにセッティングしたまま使い続けてしまっている人もいると思います。 でもそれらのモニタースピーカーは丁寧にセッティングすることで、潜在能力を引き出しバランスの良いモニター環境を整えることができます。ヘッドフォンでも作業はできるけど、より良い楽曲のサウンドクオリティを望むならより緻密なニュアンスを再現するモニタースピーカーは要となる重要ツール。 昨今の音楽制作はデジタルデヴァイスは必需ですが、音の最終アウトプットであるスピーカーはアナログそのもの。「そんなところにこだわるの?」と感じる方もいるかもしれません。でも無駄に高額ケーブルに投資するよりリターンは大。普通の部屋でもマスタリングスタジオなみのフラットなモニター環境を手に入れるセッティング方法を紹介します。 音楽クリエイター向けの原稿にはなっていますが、良い音で聴きたいオーディオ初心者も同じ段取りで好みの音に近づけられると思います。
- フラットなモニター環境はなぜ必要なのか?
- プロのマスタリング作業は意外にも音量は小さめ
- 自宅モニターセッティングの手順
・フラットなモニター環境はなぜ必要なのか?
音楽制作に使用されるスピーカーやヘッドフォンはフラットなモニター特性を追求したものが多い。それらは楽曲を楽しむリスニング向けのオーディオ機器とはコンセプトがちがいます。 例えばモニター自体の色づけが強く、強く低音がブーストされたモニターのみで音源制作した場合、その他の機器で再生したときは低音が足りなくなります。最終的な出音を想像しながらレコーディングしなければ、第三者が音源を再生したときに大きな誤差が生じてしまいます。 そんな問題を回避させるために、クリエイター向けのモニタースピーカーは色づけのないフラットな特性を売りにするものが多い。スピーカーとアンプ、そのケーブルやセッティング場所により音が変わってしまうことが常。パワードモニターが主流になったのも、ロケーションによる音質誤差を埋めるための流れと言えるでしょう。 プロのアーティストは例外なくマスタリングを行います。それはリスナーが耳にする最終的な音源を仕上げる作業。仕上がった楽曲特性を活かしながら ステレオセットはもちろん、スマホ+ヘッドフォン、ラジオやテレビ放送、ネットでのストリーミングなど様々な再生状態を想定しバランスの良い音に仕上げなければならない。 マスタリング・エンジニアはアーティストの伝えたい音を客観性をもった耳でバランスの良い繊細な音作りを行っています。
・プロのマスタリング作業は意外にも音量は小さめ
プロのマスタリングは極めてフラットなバランスのラージモニター、を中心に小型モニターなどでの出音確認も行います。ロックやポップスの楽曲においても比較的音量を抑えての作業をしています。音量や再生デバイスが変わってもバランスが崩れない、絶妙なポイントを繊細な耳で聞き分け、最終的にリスナーが聞くための微調整を行います。アルバムの場合は楽曲ごとの音量や音色のバランス、無音部分の長さなども決定。多くの場合がアーティスト、プロデューサーなどの関係者が立ち会いのもと行われます。 そのため、防音設備がない自宅でもフラットなモニター環境の整備次第でかなり近い状態で緻密な作業が行えるということです。
・自宅モニターセッティングの手順
・普通の部屋でもモニタースピーカーの実力を最大限に引き出し、フラットな音像を手に入れるための手順は大きく以下の通り ①リファレンス音源の用意 ②スピーカー位置のトライ&エラー ③吸音材で部屋の響きをコントロール ④その他
①リファレンス音源の用意
・まずは音作りの基準となるリファレンス音源を準備します。自ら制作する楽曲スタイルに近い音源がベターですが、様々な再生機器で聞き込んだお気に入りの音源をチョイスします。レベルの高いミックス&マスタリングが行われたもの。歌のニュアンスやベースの出方、楽器の定位位置など、音像全体を体(耳)が覚えている音源が良いと思います。 筆者は主に下記のようなパターンでチョイスしています。 A:個人的に長く愛聴している歌もの(日本)Rock曲 B:著名マスタリングエンジニアに勧められたR&B曲 C:世界的マスタリングエンジニアが手がけた新しめのPOP曲
②スピーカー位置の調整。
自宅でセッティングできる場所はその殆どが壁際だと思います。音色変化が体感しやすいようにまずは現在セッティングされている位置からスタートしましょう。スピーカースタンドを利用している場合は細かな移動もしやすいと思います、トライ&エラーを繰り返してベストポジションを探りましょう。 まずはスピーカーからリスニングポジションの間にも障害物がないことが前提です。
<②-1高さの設定>
原則としてリスニングポイントでの「耳」と「トゥイーター」の位置が同じかやや下位置の高さにある事がまず基本となります。 まず、今セッティングされている位置で、選択したリファレンス音源を試聴します。左右のスピーカーから正三角形に近いセンターポジションでその音色を確認します。
<②-2左右ポジションの設定>
メジャーを手に左右スピーカーの中心地点を正確に量り印をします。元の位置から左右均等に7〜15cm単位で移動。広げたり、狭めたりして音色変化を確かめます。大きな部屋であれば20Cm単位で移動したほうが変化が解りやすい。いい感じで聴こえるポジションから数センチ単位でベストポジションを探っていきます。 ※チェックポイント ①ヴォーカルの聴こえ方 ②センター定位のキック&ベースを含んだボトムの響き ③全体の定位感や空気感、シンセや左右ギターなどの馴染み方 広げすぎると歌も引っ込み、ボトム音圧が弱々しくなり間延びした音像になります。逆に狭すぎるとステレオ感が希薄になりミッドが潰れ少しごちゃごちゃした印象が強まります。 元位置にマーキング→移動(きちんとメジャーで正確に計って移動)→リスニングポイントにもどって試聴→移動→もどって試聴 という流れを繰り返しリファレンス音源の特性がバランス良く響くポイントを探っていきます。
<②-3前後ポジションの設定>
左右の位置が確定したら今度は前後の位置調整です。小さな部屋だと壁際に設置せざるを得ない場合が多いですが、壁に近いほど余計な反射音が発生しやすく音が隠りがちになるので、多少でもスペースが取れるなら数センチでも頑張ってスペースを空けます。 ここまでの細かなトライ&エラーでベストなポジションを探ります。
③吸音材で部屋の響きをコントロール
スピーカー位置が決まったら、吸音パネルをセッティングします。スタジオなどでもっともポピュラーに使用され効果も高いとされている「SONNEX」なども比較的手頃な価格で購入できますが、最も手軽に設置できるのがコルクボード。ダイソーやニトリなどで大きなサイズでも数百円で購入ができコストパフォーマンスに優れています。
これらの吸音パネルをスピーカー後ろにセッティングし、壁との間に挟みます。 普通の部屋ではどうしても壁際に設置せざるを得ない状況がありますが、壁との間に挟む吸音パネル効果は非常に高い。 またアウトボードのラックなども横に一緒に配置されている場合は、下画像のようにコルクボードで遮断することで左右のバランス改善も期待できます。 スピーカーの反対側の壁にもスピーカーの正面エリアを中心に対策すると、部屋の余分な鳴りが抑えられ音像の解像度が増します。普通の部屋では上記だけでもかなり音質改善が得られます。ぐっとお手持ちのスピーカーが「鳴る」と感じるはず。
④スピーカー土台部の環境改善
コストやスペース的な問題できちんとしたスピーカースタンドを使用しないクリエイターも多いですが、そもそもスピーカーを設置する場所の環境改善も見直しましょう。デスクやラック類など箱状の家具にスピーカーを設置した場合、スピーカーからの振動が直に伝わってしまい家具自体も響いてしまい、出音への悪影響が強いです。 ④-1インシュレーターの導入 スピーカーを点で支えることで、これらの問題を回避するためにオーディオメーカーからも各種発売されています。エンジニアやオーディオ愛好家は自作しているケースも多く、金属素材+ゴム素材の組み合わせが鉄板のようです。 アナログ的な感覚でこんなので効果あるのか?と疑いたくなるところですが、オーディオマニアの皆さんはとてもこだわりがあり、amazonのレビューも多数のコメント書き込みがあります。その種類などにより音の性格も変わるようですね。3点でのセッティングが比較的やりやすいので導入をお勧めします。 ④-2スピーカー設置面の素材 インシュレーターを挟み、スピーカー下部の設置面はコンクリートや大理石など硬質な素材を挟み、余分な反響を防止します。筆者はホームセンターで購入した遊歩道などの路面に埋め込まれる石材ブロックを使用しています。スピーカーサイズに応じて調整もできるので便利です。
⑤最終微調整
上記までのセッティングが済んだら更にスピーカーをやや内側に振ってみましょう。クラシック等、ホールアンビエンスなどを多く扱う方は平行のままのほうが良いようですが、一般的な歌ものの楽曲ならば、左右の壁に対しての反射音も抑えられさらに音像をフォーカスすることができます。5mm〜10m単位で調整して最適なポイントを探します。
まとめ
いかがでしたか?普通の部屋で音楽制作しているけど、ちょっとの工夫で驚くほどモニター環境が改善できます。初めてセッティングに取組む方が解りやすいよう、基本的な手順を紹介させていただきました。古いモニタースピーカーでも最新のパワードモニターとひけを感じないクオリティまで追い込むことができました。 ある程度の時間は必要ですが是非実践してみてはいかがでしょうか?快適なモニター環境は楽曲クオリティ向上はもちろん、創作においてのイマジネーションにも大きく影響すると思いますよ。
音楽Hi-TeQ 最後までお読みいただきありがとうございました。
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コメントありがとうございます。実機は触ったことないですね。
Wavesも使用したことはありません。
Uad,T-Racks,Overloud Gen,それぞれ質感が違うイメージです。
この中で一番濃い味がUad。Wavesはプラグイン全体的に濃い味イメージです。