宅録ギタリスト必須のマルチエフェクターの進化をたどる
バンド系の音楽を作るDTMクリエイターにとってギターアンプシミュレーターは必須。ライブ演奏をしないならDAWのプラグインだけでで完結させる人も多いでしょう。アンプでの音作りを基本にしているギタリストも部屋にアンプをマイキングして宅録できる人は多くない。
エミュレーション技術進化が著しく、老舗のレコーディングスタジオだけが所有できた名機と呼ばれるヴィンテージアウトボードのプラグイン化が進み、高級機材を所有しなければできなかった音作りが身近になってきています。ギターアンプシミュレーターは恩恵を受ける絶対人口も多く、常にその技術をリードしてきたといっても過言ではない。
私見ではありますが、90年代から宅録ギターサウンドがエフェクターによってどれだけ進化したかをまとめます。
宅録ギタリストに愛されたマルチエフェクター
筆者は高校3年の時、4トラックのカセットMTRを購入し宅録デビューした。YAMAHAのシンセサイザーDX-21と友人の先輩から破格で譲ってもらったプレベタイプのベースで音楽DIYが始まります。中古ドラムマシン(RX-21)やシーケンサー(QX-5)で打ち込みするようになる。初めの頃はギターが上手い友人に自宅まで来てもらい、アレンジも含めダビングをしてもらっていたが、自分でギターも録音するようになる。友人が所有していたデジタルマルチエフェクターBOSSのSE50をしばらくの間、借り受けたことがきっかけだ。演奏はもちろん、各種エフェクターの特徴を理解する大きなきっかけとなった。
BOSS SE-50の独特な香りは今なら新しいかも(笑)
BOSSといえば言わずと知れたギター用コンパクトエフェクターの老舗であり、日本国内の初心者ギタリストなら誰もが手に触れたことがあるだろう。当時の学生にとって、多くのペダルを手に入れるのは大変な出費。多数のエフェクターが抱き合せとなった手軽な価格のマルチエフェクターSE-50は当時大ヒットした。著名なプロギタリストも使用しており、中でもロバート・フリップが雑誌などで絶賛していた記憶がある。
エフェクターから直接ライン録音すると、なんだか摩訶不思議なサウンド。レンタル中にプリセットで遊んだことが自身でギターを弾くきっかけになった。
リヴァーブから始まるプリセットの順番、う〜ん懐かしい。普通にシールドを挿しただけでも実に音楽的な音色ですね。コーラスやディレイは独特の色気があります。動画には登場しませんがボーカル録音用のプリセットもあったと記憶しています。歌を初めてエフェクトをかけ録りしたのもこいつで、稚拙なデモテープ(カセットMTRによる)の完成度が一気に飛躍した(1992年当時)。
人気のため、後継機SE-70もずいぶんヒットし長く生産されていたようです。筆者は直接使ってみる機会には恵まれませんでした。
当時、RolandのGP-8やその後継機GP-16などもマルチエフェクターの代表でしたね。布袋さんのブログにもGP-8ネタが。
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ZOOM9030はサンズアンプが買えないクリエイターの救いだった
自分でギターをレコーディングする欲求に目覚め、購入したのがZOOM9030。やはりハーフラックのエフェクター。ギター少年というよりも宅録少年がギターを持ったということで、コンパクトエフェクターを一つも所有せずに手に入れたのがこいつ。はじめに結成したバンド時代に多くのデモテープやライブで使い込んだエフェクター。青い文字のディスプレイが高級カーステレオのグライコなどを彷彿させ、カッコよかった。
ライン録音したディストーションサウンドも様になっており、結構重宝した。コンプとディストーションはアナログ回路で歪み系ギターの録音もバッチリ。個人的にはコンプ設定の自由度が低く、いい感じのサスティーンを得るには難しかったのでライブではBOSSの単体コンプと組み合わせて使用してました。
Eddie Van Driverなど、著名ギタリストの音色を模したプリセットもなかなかよかったが、リングモジュレーションなど変態的な音色を得られる特徴的なエフェクターも搭載されていたのは遊び心も多い。壊れるまで使い尽くした楽しいエフェクター。
なぜかすぐに手放してしまったVOX Tonelab SE
KORGから発売されていたVOXのTonelab SE。このブログを執筆するまで所有していたことすら忘れてしまっていた。ワウペダルが欲しくなったきっかけで見つけたマルチエフェクター。ペダルタイプなのでライブ使用を想定されている。真空管なども搭載されており、暖かさを感じさせる独特の音色なのだが、VOXという冠をつけての商品のため、どうしてもその色が強く出た印象。様々なアンプシミュレートを選択し、各種エフェクターを調整してもダイナミックな音色変化を体感できないことが手放した理由だったと記憶している。オルタナ的なヘヴィーなサウンドを得るには非力すぎた。
LINE6 PODで飛躍したアンプシミュレーター
すでに音楽制作の一線から後退し、レコーディング機会もなくなった2002年頃。ヤフオクで初代POD Ver2を入手。XT版が発売されていない当時の中古相場は3万前後。90年代後期に見たサウンド&レコーディングマガジンのアンプシミュレーター比較記事、Line6というプラグインの圧倒的なリアリティに感銘を受けてから数年、その音にたどりつく。いやあ、リアルですね。有名アンプのエッセンスが見事にシミュレーションされプリセットだけでもかなり満足したサウンド。
ライン録音するとこれまでのエフェクターの出音とは差が歴然。細かなエディットをしなくてもプロアーティストに近い音色が楽しめました。アマチュアギタリストが手軽に所有できる機材の進化に驚き、後に対してレコーディングに詳しくもない「誰も」がそこそこの音で録音できる時代を予感させました。
当時加入していたバンドで、DI的な優秀さからこれをベースにつないでライブを行っていました。後にベース版の後継機PODも手に入れますが、ライブ使用するにあたって音も太く、オリジナリティ溢れるベーストーンを生み出すことができました。個人的にはアンプの出音が強制的にパッケージされた硬質なサウンドという印象を持ちました。
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そしてNative InstrumentsのGuitar Rig 5へ
暫く音楽から遠ざかっていましたが、2013年にCubaseに移行するタイミングでKOMPLETE(ソフトウェア音源バンドル)もアップデートしこの10年のプラグインの進化を思い知らされました。バンドルされていたGuitar Rig 5は更にリアルさが増し、豊富な組み合わせもさることながらマイキングしているエッセンスも見事に再現していますね。これが初めから制作環境にある若いクリエイターはもう楽曲制作のプロセスや解釈も違うのでしょう。これまでの発想を超えた面白いミュージシャンも増えそうですね。
個体のアンプをプロファイルできるKEMPERなんかはもう極め付け。まあ結局は無数の選択肢の中、何を組み上げ、アウトプットさせるという感性が一番大事な時代なのかもしれません。
まとめ
いやあ、すごいです。エフェクターの進化、プラグインの進化。何もかもがヴァーチャルな時代です。ブレードランナーの世界はもう直ぐですね。「蛇を見てこれは本物かい?」と尋ねるハリソン・フォード。ヴィンテージのコンソールはもちろん、高級マイクなどもエミュレーションされる時代。手軽シミュレートされる分、本物の価値はますます上がっていく時代なんでしょうね。だからこそリアルに楽器を持ち込んで生でライブができる価値は更に見直されます。
20年前にイメージした「あんな音で録音できたら、かっこいい作品が作れるのになあ?」と夢見ていたことは、ほとんど現実になりました。それとは裏腹に音楽が売れない時代になり、それで生計を立てるのが難しい時代。そんな時代に純粋に紡ぐ音楽は本来的な意味で本物に近づいていくのかもしれません。これからどんな音を紡ぎましょうか?SE-50で作ってみるのも良いかもしれません(笑)。いや、友人が我が家の押入れに残したGP-16かな。
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