スマートフォンで手軽にできることから、一般の方でも動画撮影の機会は増えています。単に撮りためておくのなら気にもなりませんが、人に見せたりYouTubeに投稿したりするなら音質にも気を払いたいもの。
有益な講演会や子供のピアノ発表会の動画撮影時、近くで写真撮影しているケースが多く、後で見返したとき、カメラのシャッター音が思ったよりうるさく、折角の動画を残念に感じたことはありませんか?
15年前なら不可能とされていた「シャッター音の除去」は現在の音声編集技術ではかなりキレイに除去できるんです。そんなプロの音声編集技術を紹介します。
プロの世界で音声のノイズ除去やオーディオ修復で重宝されているのがiZotope社のRXという修復ツール。
ハリウッド映画を手掛けるような先端スタジオでは定番的なアプリケーションです。RXは下記の写真のように音声状態がグラフィカルに表示されます。グラフィック部分を編集することにより、様々な音補正が行えます。これはライブ音源のMC中のシャッター音(下記に音声サンプル有)
どの部分がシャッター音かを聴き分け(見分け)、該当箇所を選択して処理します。
シャッター音が鳴っているときの画像です。シャッター音は周囲の音と明らかに違うことからチェック部分のような縦筋に表示されます。
Spectral repairというツールの設定を決めProcessボタンを押すと。
その部分(シャッター音)がメーター上で消えてしまいます。(モチロン音も)
実際はその部分を(除外するノイズ)と判断し、前後のシャッター音が入っていない部分の音声を解析し、消し込んだシャッター音の穴を埋めるための再合成が行われます。サンプルのシャッター音は強めに入っており、上記の単純処理だけではやや違和感が残る仕上がりでしたので、もう3~4の別処理を加え消し込み処理しています。
単純にその部分を消去してしまうと「無音」部分ができ、音が途切れて違和感がでてしまいます。上記で用いたSpectaral Repairはシャッター音前後の音を解析し、なくなった部分を再合成する機能をもつプラグインモジュール。解析するための前後データが重要なので、連続してシャッター音が入ってしまうと、合成素材が足りず不自然な音になりがちです。
そんなことから、完全除去できる異音(ここではシャッター音)はなるべく、短い音「カシャッ」とか「パツッ」とか「パチッ」と瞬発的な音のほうがまるで何もなかったように再合成できます。シャッター音はよく聞くとコンマ何秒で2回づつ「パ」・「シャ」と開いて閉じる音が2音続いているため、実は単純な再合成はしずらい素材。マイクから近い場所で強い音で入ってしまうとうまく消しきれず、実は難易度は高い。
他にも苦労した処理例は、ハイヒールの足音。ハイヒールは「コツ」「コツ」と比較的短いので消し込みやすいのですが、トンネルの中だったりすると残響が加わり「コツーン」「コツーン」となってしまうことで、
綺麗に消し込めなかったりします。音がちょっと長くなるだけでも全然除去精度が変わってしまいます。
先日、急に相談があったインタビュー素材。演者のピンマイクにトラブルがあり、音割れを起こしてしまったためメイン音声が使えなくなり、仕方なくビデオカメラのビルトインマイク音声を使用することになったという音声。
約1時間にわたるインタビューの間、動画撮影しているにも関わらずスチールのカメラマンが何百枚も「カシャ、パシャッ」と、エンドレスで撮影しており、このシャッター音の除去を相談いただきました。
①で説明したシャッター音の除去はAIが勝手に判断しての自動処理ができません。シャッター音はその一音、一音の成分を確認し、丁寧に消し込む作業を延々と続けなければ綺麗に除去はできません。
また、マイクからシャッター音が近い場合は単純処理するだけではなく、細かな微調整が必要となり、莫大な処理数となってしまいます。
当然、数十時間かけて処理しなければならない工数が予想され、至急対応はできずお断りせざるを
得ませんでした。こういったケースは納期もコストもかなり大きくなるため、かなりのコストと時間を要します。せいぜい10枚分くらいのシャッターなら良いのですが。
動画に混入したカメラのシャッター音の除去に関しては
・前後の間がしっかりあれば、かなり綺麗に除去できる
・連続するものや音が長いものは精度が落ちる
・あまりにも量が多いと処理時間やコストが莫大になる
<おまけ>
年齢層が低いお子さんのピアノ発表会だと、客席の子供の声なども滅茶苦茶気になる場合があります。こういった案件もお手伝いすることも多いです。そのような動画や録音物でお困りの方がいらっしゃいましたら私が運営するハイブリッド・サウンドリフォームにお気軽にご相談ください。
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