先日、音声による学習コンテンツのノイズ除去を依頼いただきました。ナレーションの声そのものは比較的良い音で録音されているのですが、文節ごとに「ギリリ…」という椅子のきしむ音が混入。BGMをかぶせラジオ風に編集したとしても、有料販売するコンテンツとしてこのノイズは気になります。
当方に改善依頼が来る前の段階でかなりの音声編集が加えられており、ノイズ処理に苦労した爪痕が多く残っていました。語間のノイズはノイズゲートで大胆にカットされていましたが、語尾が微妙に消えてしまったり、ノイズ域の中高音の周波数を過剰なイコライザー、局所的なゲイン調整によるカットを行ったことで、演者の声も「鼻づまり」のように曇った音質になってしまっていました。
このような問題の場合、僕はiZotopeのRX7Advancedという最新の音声修復ツールを使ってノイズ除去をします。ある程度の環境で録音したナレーションコンテンツなら、自動処理できるDialogue Isolateというモジュールでほとんどきれいになる場合も多い。こちらのモジュールはその名の通り、人が話すシーンに混入する「カサカサ、コソコソ」といった環境ノイズを自動判別して軽減します。基本的には削り具合を上下させるだけで、RX7を所有していれば簡単そのものです。
しかし実際には強くかけすぎると原音を大きくゆがめてしまうため、違和感が残らないバランスで処理すると、大きなノイズは殆どの場合残ります。残ったノイズを別のモジュール(Specral RpairやGain、Deconstructなど)で細かく処理します。ノイズが音声成分のどこに混入していくかの判別が最も人的スキルが必要な部分。スペクトラムメーターを縦横無尽に拡大し、ピンポイントプレビューを繰り返し処理すべきポイントを判別します。高解像度の解像度もプロスペックでないと、これらの作業は困難です。
上記の作業は経験値にリンクするため、RX7Advancedを初めて触るユーザーが簡単に処理できる可能性は少ないと思います。医者ではありませんが、まるで内視鏡での手術さながらの細かな処理が必要な場合もあり。
ナレーションにノイズゲートをかけると言葉の語尾など、音量が小さくなる部分のスレッショルド設定が大変難しいですよね。ご依頼いただいた音源も言葉尻が消えてしまっている箇所も多かったのですが、言葉尻単位で局所的に欠落部分のゲインアップ処理も行い修復。
ギリギリ」という椅子のきしむ音を除去していくのは超絶に根気がいる作業でしたが、無事クライアントに満足いただけるノイズ処理ができました。その後、EQやコンプ、リミッター、テープエミュレーターなどで抜けの良い音像に仕上げ納品マスターとしました。
特に長時間のナレーションを録り終えてしまった後のトラブルの場合、演者への再依頼はしにくいものです。後付けで音を何とかしたいナレーション—ションコンテンツにお困りの方がいらっしゃいましたら、私が運営しております、ハイブリッド・サウンド・リフォームまでお気軽ご相談ください。
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