「本格録音が可能なDAWやMTRは分からない、覚えたくもない。」
「でも完成度の高い音楽作品を作りたい…。」
そんな女子ボーカリストは歌パートをなるべく綺麗に録音し、その素材をミックス&マスタリングが得意なクリエイターに編集してもらうのが最もコストパフォーマンスに優れています。
ここでは低価格で個人利用できるリハーサルスタジオのCD-Rを活用したセルフレコーディング事例を紹介します。
手順は以下の通り
誰でも作品を発表できる場が増えたことから、歌手活動は多様化しています。PPAPで世の中を席巻したピコ太郎。YouTube動画からメガブレイクしたのは、誰もがその「可能性」があることを証明しています。
発表後数ヶ月間で誰もが知るTVコマーシャルに引っ張りだこなんて夢のようですね。自らの歌(パフォーマンス・作品)をYouTubeで発表することは駆け出しのシンガーにおいても主流です。本格的なDAW(デジタルオーディオワークステーション=パソコンで使用する多重録音&編集アプリのこと)で作り込んだ作品を発表する人もいれば、スマートフォンなどの自撮り動画などのクオリティーはバラバラ、弾き語りやカラオケなどそのスタイルも多様です。
Periscopeやツイキャスの生配信も珍しくありません。継続的にパフォーマンスを続けた努力が実りファンやフォロワーが増えると、ワングレード上げた商品価値のある音楽作品を発表したくなるのは自然の流れ。しかし、録音機材や音楽制作に詳しい知り合いが身近な場所にいないボーカリストはどうすればよいのでしょう。
ノウハウはブログなどで無数に得られますが、機材を購入しそれらを習得するためには多くの場数や経験が必須です。自身の「歌」に自信があれば、自前で全部やることにこだわらずそれが得意なクリエイターと連携してハイクオリティな音楽コンテンツを増やしていくことが賢明です。
僕は録音された音声をリフォームするサービスを運営しており、録音環境に恵まれないミュージシャンやボーカリストの作品を手がけることも多いです。この記事で紹介する制作するフローは、そんなユーザーさんに苦肉の策として提案した方法です。
機材に詳しくない女性ボーカルさんがこれまで、録音をサポートしていたメンバーの都合で、
録音機材が何もないままセルフ録音せざるをえない状況になりました。そんな相談から苦肉の策として採用した方法でした。
しかし、仕上がった結果が良かったため、その後も継続的にこの方法をブラッシュアップして作品制作が行われています。
プロ歌手がリリースするCDや配信音源の99%はマルチトラックレコーディングという方法で録音されています。カラオケボックスで歌っている時に、スマートフォンで録画したら、カラオケの音や自分が歌っている音、友達が騒いでいる物音まで、全部が一緒に録音されるのは解りますよね?
マルチトラックレコーディングは歌は歌だけ、ドラムはドラムだけ、ギターはギターだけ、ライブアルバムだったら、会場の歓声用にと、後でそれらのバランスを調整できるようにそれぞれ個別に録音します。それを音作りのプロであるミキシングエンジニア(ミキサー)が一つ一つの音を綺麗にまとめ、迫力が出るように音作り(ミックス)をします。カラオケでいうエコー等、音作りをするためのエフェクターもこの時点で調整されます。
ですので、ここから先の手順は「歌」だけをなるべく綺麗に録音して
「音作りができる人」に渡すための手順と理解してください。
まず自分の歌を録音するためのカラオケを用意します。カラオケは歌うときだけではなく、後から音作りをしてもらう人に渡さなければなりませんので、MP3などのオーディオファイルで準備しておきましょう。(手に入れられる場合はwavやaiffなど、非圧縮の高音質なもの)
スタジオでは「歌声」だけをなるべく綺麗に録音したいので、カラオケは「ヘッドフォン」で聞きながら歌います。ですので、ヘッドフォン(いつも音楽を聴くときに使うものでOK)も用意しておきましょう。
バンドなどが利用するリハーサルスタジオを予約します。おおよそのスタジオは広めの部屋でも空いている時間に安い価格で使用できる「個人練習プラン」が存在します。スタジオによっては当日か前日にしか予約できない場合もありますので、調べておきましょう。
都内でチェーン展開するリハーサルスタジオNoah(池袋店)さんの料金プラン
初めて録音する人やロックやダンスのパンチ系の曲ならSM-58というスタジオ定番のダイナミックマイクで充分です。(追加料金がなくお得)しかし、繊細なバラードや細かなニュアンスが必要な本格的なアコースティック曲なら、コンデンサーマイクをレンタルしましょう。
上手く使いこなせれば、後の音作りのグレードに影響します。(録音の感度が高いので、セッティングがわりと難しい)
無料レンタルできるレコーディング用の高音質ヘッドフォン(SONY MDR-CD900STなど)がスタジオの貸し出しリストにあったら迷わず追加で借りておきます。
スタジオのお兄さんに「マイクからスタジオ備え付けのCD-Rに録音する方法」を確認します。※予約時に相談してみるとセッティングしてくれる優しいお兄さん(お姉さん)も存在します。
コンデンサーマイクをレンタルする時はマイクに電源を供給するためのファンタム電源のボタンも確認しておきましょう。
都内のリハーサルスタジオNoah(池袋店)さんのオプション機材リスト
コンデンサーマイクも充実していますね(この中だったらRODE NT-K)が個人的に好みです。
配線などが終わったらいよいよ綺麗に歌を録音するために重要なレベル調整を行います。(☆は重要度目安)
スタジオのお兄さんがセッティングしてくれた場合、基本的にはマイク→ミキサー→CD-Rという経路で繋がっています。
いい音で録音するためのチェックすべき場所を押さえておきましょう。
これが適正に設定されないと、マイクからの音が拾えません。上げすぎると歌の音色を損ない、音割れが起こります。
写真のミキサー右下、これはレッドゾーンにかからず黄色に収まるバランスで調整しましょう。
歌っている時のボリュームが最も大きい部分がレベルメーターの-10db前後になるように下記のインプットレベルを調整します。
音が割れていたら、音作りが得意なクリエイターでもいい音で仕上げることが困難。何があっても絶対に音割れさせないように録音するための、最重要ポイントはここの「レベル調整」です。
最終的に録音されるここでのレベルオーバーは致命的となります。下記の画像で横に並んでいる「-db 50 40 ・20 ….」と、並んでいるメーターは入力レベルの強さ(dB)を表示するメーターです。これをしっかり確認しながら調整します。歌で一番大きくなるポイントがここでは「-8前後」に収まるよう、右側の「INPUT」でレベル調整します。
※レベルが小さすぎるいい音が作りにくくなるので、平均的に-20以上をキープしたいです。
CD-Rのヘッドフォン端子にレンタルしたレコーディング用のヘッドフォン(SONY MDR-CD900STなど)を接続し、普段よりも2割くらい大きなボリュームで「録音した自分の歌声」を確認します。ここで音割れや変なノイズがしたら、4-4→4-1→4-2の順で少しずつレベルを絞っていきます。この経路のどこかで音割れを起こしている原因があるはずです。また、人間の声は発音やマイクの感度などでレベルメーターが振れないくらいの「一瞬」のピークがあるので、メーターだけを見て安心してはいけません。必ず、試し録りした「歌声」をヘッドフォンで聴いて、確かめましょう。
時間に余裕があればマイクの距離などを調整し、なるべく自然な音色で声が録音できる位置を調整します。
後で採用テイクを選び易いよう、メモを用意しその場で記録していきます。CD-Rは上書きできないので、歌のテイクはどんどん録音していきます。1回、曲を通しで歌って録音。音割れがないか、Aメロ、サビなどで音質が変わりすぎていないかを確認します。
Take1 全曲通しB
Take2 全曲通しA-
Take3 2番サビのみ1 △
Take4 2番サビのみ2 ×
Take5 2番サビのみ3 ○
Take6 エンディングフェイク
上記のようにメモしておくと、あとでデータをまとめる時に便利です。
スタジオの予約時間内でベストテイクが録れるよう頑張りましょう。おおよそのスタジオの「個人練習プラン」は2人までOKなところが多いので、友人にアシスタントをお願いすると楽です。CD-Rのボタンを押してもらったり、テイクのメモを記入してもらったりと歌に集中して作業できます。
ここまでがスタジオでの作業。
リハーサルスタジオで歌の録音を終えたら、採用音源を決定するディレクション作業と音作りをお願いするクリエイターのために素材の整理をします。
歌詞カードや譜面を用意します。
録音したCDのチャプターが何番目かメモ。
歌詞カードや譜面のその場所を丸く囲むなどしておく。
基本的にはBメロなどのブロックが望ましいですが、フレーズ単位くらいの差し替えがベターです。
時間が経つとどれだか解らなくなります。また、素材を他人に加工してもらう時の最低限のマナー。
レベルに応じて無料、有料で依頼しましょう。ニコニコ動画サイトには様々なレベルのアマチュア音楽クリエイターがノウハウのシェアをしています。歌素材を綺麗にミックスしてくれるクリエイターは「MIX師」と呼ばれており、ピッチ補正やケロケロボイス加工まで対応してくれる方も多く存在します。(ここで紹介したフローでは対応できない方もいると思います)「ミックス 依頼」などの検索や下記のような掲示板で自分に会う方を探してみましょう。
いかがでしたか?録音周りに詳しく無いボーカリストはプロでも存在します。プロ用のレコーディング機材を揃え、使いこなすにはなかなかハードルが高いものですが、遜色ないハイレベルの音源を作りたいのなら避けて通れない課題です。また、身近な知り合いだと好みの音作りを必ずしてくれるとは限らないし、実力以上の要望が出しにくかったりするもの。コストパフォーマンスと完成度を極めるなら、自身で出来る範囲を広げて良い作品を創りたいものですね。録音やミックスでお悩みの方がいらっしゃいましたら、お気軽にコメント&メッセージください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
音楽Hi-TeQ 〜Hybridsoundjournal.net〜
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