先日、カセットテープをネタにしたブログ記事を執筆した。世代を限定したタイトルもあり、深く読んでいただケているかは別としてFacebookで多くのいいねがついた。今より不便だったけど、ちょっと大事に音楽を聴いていた30年前を振り返ったことで、ふと気づいたこと。
20年ほど前、バンド活動をしながらレコード店でアルバイトをしていた。マライア・キャリーのクリスマス曲がバカ売れしMy Little Loverがファーストアルバムを出した頃。(最近、小林武史とaccoの娘二人もそれぞれ歌手デビューしたそうですね)
スタッフとして勤務した店は秋葉原に本店があった家電店が運営する百貨店のテナント店。今では標準的なサイズだが、当時としては面積も広く、国内盤の品揃えはエリア最大だった。タワーレコードやHMVが都内に数店ある程度で、本格的なチェーン展開をしていない時代。ターミナル駅近くのレコード店アルバイトは超絶に人気があり、僕が面接をうけた採用では3人の採用枠に対して100名以上の応募があった。出勤して先輩スタッフから尋ねられたことは、何をアピールして採用されたかという素朴な疑問だった。
面接では精通している音楽を聞かれ、E.L.OやElvis costero、NINなどと答えながらもクラシック(現代音楽)やジャズにも興味があるようなことを話したような気がするが、勤務後、大量の音楽に触れるようになったため少し曖昧な記憶。インディーズが得意なスタッフ。ギターロックに強いスタッフが同期入店となった。皆、幅広い音楽に精通する音楽好きで仕事以外の時間も派手に遊んだりした。
インターネットは低速度のダイヤルアップ回線で利用されてた頃。音楽や動画が今のレベルになることは想像できず、音楽コンテンツは必ずCDショップで購入しており、情報量も今と比べとてもゆっくりしていた印象がある。
働き始めて少し経ち、他のレコード店もスタッフ目線で見ることにも慣れた頃、売上対策の一環として、試聴機の増設が対策された。
お店で試し聴きできるCDプレイヤー。今ではおおよそのお店で数多く設置され、主要カテゴリーのレコメンドは聞けて当たり前だが、当時、外資系ではないレコード店は大型店でもほとんど導入されていなかった。新譜打ち出しコーナーの各所で小型CDラジカセやビデオ(VHS)を流す程度だった。
現在は定番的に使用されている、CDチェンジャーが搭載されたヘッドフォン試聴機はなく、フロントランナーとして活用していたタワーレコードやHMVを羨ましく思ったものである。
本題です。さて20~40年前レコードやCDを購入していたあなたに質問です。特にオリジナルアルバムを購入する前に全曲試聴したことがあっただろうか?
気に入った曲やアーティストを発見し、より深く知るためのコンテンツとしてどんな曲が入っているか、「期待値を込めて」アルバムを買っていなかっただろうか。CDショップに勤務していた僕でも、情報が少なかった洋楽アーティストのジャケットや帯のキャッチコピーに惹かれ、内容を知らないままバクチ的なCD購入をずいぶんしたものだ。
2000年代に入り、ダウンロード中心のi-Tunes時代になってから全曲試聴プレビューが常識となった。あくまでも個人的な感覚ですが、大好きなアーティストでも全曲プレビューすることで、「今回のアルバムは別にいいかなあ~」と思うパターンが増えた。もちろん、フルバージョンが聞ける訳ではないのだが、どんな曲が入っているか購入前に知るのには充分だ。
音楽購入客にとって、事前に試聴できることは損をさせない素敵な考え方。あくまでも店頭で試聴機にセレクトされているうちは良かった。
アルバムであってもそれぞれの楽曲がバラ売りが可能。ネット上で試聴できすぎることで、「アルバム」を購入しないと出会えない「楽曲」の価値を低下させてしまったのではないか。音楽は個々の感性に共鳴するものだが、それは精神状態や時代、どの場面で出会ったかなどで、その印象がガラリと変わることがある。そんな可能性を削いでいる。
楽曲コピーの自由度や利便性が進化するに伴い、CDやレコードという制約があるメディアの最大の利点を潰してしまったのではないか。
逆の見方をすると、中身がよく分からない「福袋的な」商品をずっと購入させられていたという考え方もあります。
目に見えない音楽というコンテンツは「イマジネーション」がキーであり、シングルからどんなアルバムが制作されたかを想像したり、音楽雑誌を読むことによる多角的な楽しみ方のバランスが優れていたのは確か。リスナーそれぞれがより、音楽を味わう土壌があった。
プリンスのLOVESEXYというアルバムは曲ごとに飛ばせないよう、アルバム全体が一つのファイルになっている。曲ごとにスキップができない(笑)。そんな対策が今では有効だったりして。
かつてヒットを放ったミュージシャンの収益も減っているという。そりゃそうですよね。受動的なテレビメディアなどの影響力が弱くなったり、出来上がった楽曲が常にごまかしがきかない状態で販売せざるを得なかったりと、ある意味真の実力が問わる時代。そんな中から抜け出るアーティストはやはり圧倒的な何かがあるはず。
すでに新しい音楽に出会う機会は、テレビや雑誌メディアよりもインターネットメディアの方が多くなっている。高速回線が普及してからはネット上に誰もが楽曲データをアップすることができ、無数の曲がオンライン上で楽しめる。有名・無名に関わらずYouTubeなどで音楽を聴く(観る)のも普通。お金をかけず、それでしか音楽を楽しまない人も存在する。
一方的に情報を流すテレビメディアなどとは違い、自ら「選択・検索」する行為が必要なインタラクティブなメディア。新しい楽曲に出会うパターンが複雑化した。数年前まではそれらは自らの楽曲をダウンロードしてもらったり、CDを購入してもらうためのプロモーション要素が高かったはず。しかし、そんな価値さえも変えてしまうのが定額制ストリーミングサービスだ。
聴き放題サービスが日本国内でも始まった。既に先行してサービスを提供している海外ではついにデジタル音楽(ストリーミング・ダウンロード)の売上がフィジカル(CDなど)の売上を越えた。大きく伸ばしているのがストリーミングで、ダウンロードやCDの売上は年々低下している。
定額料金を払えば数千万曲の音楽が聴き放題になる、定額制ストリーミングサービス(Apple Music, Google play music, Spotify, AWA, Line Musicなど)がこれらの成長を牽引している。月額1,000円以下で数千万曲が聴き放題だ。サービスにより配信されるカタログに違いがある。幅広く音楽を聴きたい音楽ファンにはたまらないサービスだ。Apple MusicやGoogle play musicでは自分だけが所有している音楽データさえも統合して楽しむ事ができる。
MP3以上の音質が必要ない音楽ファンとって最強のサービス。もちろん再生される事でアーティストに収益がもたらされるが、CDなどを販売するより収益が低すぎる事で様々な問題提起がなされています。
ミュージシャンはいい楽曲を作れば良い。しかしそれで生計を立てるのはとても難しい。DAWなどの進化により低コストでもクオリティの高い楽曲が生み出せるようになり、流通させるのもメジャーとマイナーの垣根がなくなりつつあります。
抜け出すには独自の付加価値を生むマーケティングが必要。アイドルと握手できる付加価値、購入しなければ参加できないライブコンサート,かっこいいジャケットがステイタスになるアナログLP制作など、新たなマーケティング手法が必須となる。音楽で生計を立てたい「プロ」のミュージシャンには必須のスキルになることは間違いない。
なんにしてもレコードやCDというお皿は産み落とされる曲にとって理想的なフォーマットだった。Google Play musicをヘヴィーに利用しながらもアナログレコードが欲しいと感じるこの頃です。
音楽Hi-TeQ
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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