先日、マスタリングセミナーに参加してきた。国内のマスタリングスタジオの老舗「サイデラマスタリング」のチーフエンジニアである森崎氏が講師を勤める。アドヴァンスコースともあり参加者は大手編集スタジオ、レコーディング&マスタリングスタジオ経営のエンジニア、作曲家、ミュージシャンなどプロの音楽・映像制作に関わる人が大半。
講義は全5回。参加した理由はマスタリングプラグイン「Ozone6」がプログラムにあることが決め手だった。筆者はアマチュア音楽家向けの音声補正サービスを運営しているが、その中でも使用頻度の高いソフトウェアでありスタジオ環境や扱う素材は違えど一流エンジニアがどこまで使い倒しているかをその耳で確かめたかった。2回目である先週はサイデラマスタリングで開催された。
サイデラマスタリングとは
坂本龍一をはじめとした数多くのマスタリングを手がけるオノセイゲン氏が設立したスタジオ。Sound&Recordingマガジン(以下サンレコ)などにも頻繁に登場し、音楽制作に関わるプロならほとんどが耳にしたことがある老舗。都心の一等地にあるが、閑静な住宅地域にセンスの良い建物が立っている。オノセイゲン氏はマスタリングエンジニアのパイオニアとして、多くの興味深いインタビューを受けている。音を表現する言葉は難しいが、とても分かりやすいので一部紹介します。
オノ セイゲン「MR-2000S & DS-DAC」インタビュー
セミナーのプログラムにサイデラマスタリング訪問が組み込まれたのはマスタリングにとって重要なモニター環境を実際に体感してもらうのがやはり理解しやすいという森崎氏の意図によるもの。スタジオ内の機材詳細はこちらの公式ブログに惜しみなく公開されています。参加者は順番にエンジニアが作業する定位置でリスニングさせていただいた。フラットかつ色付けないクリアなサウンド。一般的な高級リスニングオーディオのそれとは明らかに違う化粧がされていない音色。
マスタリングは様々な機器で聴くための「マスター音源」を仕上げる工程であり、フラット(色づけがない)ということがとても重要だと再確認。使用機材やそれに対しての投資額は比べ物にならないが、自身のモニター環境もそれなりに検討していたのに気づけたのも収穫。その場で実践して頂いたデモマスタリングでも想像以上に音量を抑えて作業をしており、その出音を体感できた。今後、自身の基準となる貴重な経験となった。
機材そのものの特性はもちろん、それらを活かすモニターセッティングについても随所に細かな工夫とこだわりについて伺った。筆者は恥ずかしながら位置以外のモニタースピーカーのセッティングには無頓着に使用し続けていたが、これをきっかけに基本的改善をした。スタンドを使用していないことから、これまでスピーカーを支える土台素材が違っていたため、スピーカ位置変更に加え土台となる石材を購入し設置した。ローエンドの鳴りやステレオ解像度を改善。吸音テクニックなども解説される次週の講義を受けたらその他の調整も進めていきたい。(スピーカーの正確なセッティングや吸音ボード設置、インシュレーターなど)
この動画をたまたま見つけて、とても分かりやすく説明されていたのがきっかけ、ケーブル変更などで音色をチョイスする基本スタイルは変わっていないが、当時に比べて手法も変化しているもよう。その中でもOzone6導入のインパクトは大きかったようだ。
こちらもRock oNさん主催のセミナー動画。Ozone6の開発元であるizotopeのエンジニアによるプレゼンテーションが収録されています。筆者はこれを見てOzone6の導入を決定。
マキシマイザーの登場によってマスタリングの手法に大きな変化の波があり、アナログ機材によるリミッティングからデジタルならではの新世代リミッティングは既にスタンダード。最終段階のプラグインで劇的に音像が変化する。Ozoneのマキシマイザーはその自然な音色に加え、緻密な解像度など、森崎氏のマスタリング手法を次の段階にステップさせたよう。後半に行われるセミナーでどこまでの内容が語られるか期待したい。
音楽Hi-TeQ
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