Free as a Birdが示した秘蔵音源復元術をDAWで再現

RX−3
Share on Facebook
Share on LinkedIn
このエントリーをはてなブックマークに追加
LINEで送る
Pocket

あなたはご自身の歌や演奏を録音したことがありますか?古くはカセットテープ、今ならスマートフォンでも手軽に録音が出来る時代。メモ程度に曲の歌詞やメロディーの断片を録音するなら場所を選ばず簡単にできます。

1995年、ジョン・レノンを欠いたビートルズが25年ぶりにシングルをリリース。「Free As a Bird」という時空を超えてセッションレコーディングされた楽曲に当時の音楽ファンはそのテクノロジーに夢を抱いたもの。故ジョンレノンがカセットテープに残した秘蔵音源を元に残りのメンバーで完成させた奇蹟の曲は近代レコーディングの進化を示唆していました。

今ではそんな魔法のようなレコーディングも数万円(もしくはフリー)のDAWに多くのノウハウが詰め込まれ、この20年で音楽制作環境は著しく進化。そう、カセットテープ音源をネタに「全世界にリリースできるCD」を自宅でも作成できるということ。

一口にDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)といっても多くの機能が搭載そのすべてを網羅的に把握している人はとても少ない。オーディオリペアソフトと併用しFree As A Birdの制作の入口をシュミレーションしてみたいと思います。

 

やはり4人が揃わないとビートルズにはならない?

今年はポール・マッカートニーが来日。往年のBeatlesナンバーも数多く演奏し元気な姿を見せてくれました。ブラスやストリングスセクションは入らないコンパクトなバンド編成。それらの音色はYAMAHAのシンセで演奏されその音の良さにも目を見張るものがありました。名曲揃いでもちろん良かったのですが、ビートルズの曲にはジョンやジョージのコーラスがないと完成しないと感じたのは私だけ?

Free As A Bird/1995(リリース版)

「Free As A Bird」。レコーディングについて詳細は語られていないが、ポール所有のスタジオで当時ジョージと親交が深かったジェフ・リンがプロデュース。音作りの中核を担っている。カセットテープの入念なクリーニング後、当時の48トラックのアナログテープにダビングしてからその他の楽器をレコーディングされたといわれています。

元ネタと思われるカセット音源

この音源が本物かどうかは別として、近い状態のテープから楽曲を再構築をしたと想定してみましょう。アナログテープ特有のヒスノイズが多く含まれている。プロミューシャンの宅録なので、ある程度良質な音源といえます。収録時の「カサっ」というエアーノイズなども気になる箇所が結構あります。この音源をジェフリンが試行錯誤してクリーニングしたとされています。「結局、元のテープはどうすることも出来なかったよ」という意味合いのコメントも残していますが、詳細についてはあまり触れられていません。95年当時でも良質なノイズサプレッサーが存在していたため、それらは間違いなく使用したはず。オーバーダブした歌や演奏とのミックスバランスをどのように設定したのかが興味深いですね。

今なら状態の悪いテープでもオーディオ・リペアソフトのRXプラグインで

大手プラグインメーカーの米国Izotope社(アイゾトープ社)が開発したRXは複数のオーディオリペア系のプラグインが搭載されたスタンドアローン使用できるソフトウェア。ヘッドフォンで動画を試聴してもらえると驚きます。実際にどの程度ノイズ除去が出来たかのサンプルも試聴してみてください。

「サー」というヒスノイズはDenoiseというプラグインでラクラクに除去。

アナログカセットやライブハウスなどで収録された音源にはこのようなノイズが入りがち。デジタル環境に移行した現在は積極的にそこに収録された音源を持ち出すことは少ないでしょう。でもこれならノイズが多めの音源も奇麗に修復できます。

ちなみにこちらのプラグインはトラックに差し込んでリアルタイムにエフェクトするよりも、オーディオ波形を選択してその部分を書き換えるという処理方法となります。

「カサっ」という演奏意外のノイズはSpectral Repairで

Free As A Birdの元音源でも各所に「カサっ」というノイズが入っています。スマートフォンやハンディカムで録音された音楽はこういったノイズに加えて演奏外のノイズも気になりがちです。飲食を伴うBARでの演奏などには食器などの「カチャっ」という客席の食器ノイズが混じりがちです。こういったピンポイントの音を軽減してくれるのがSpectral Repairというプラグイン。こちらも通常の楽器エフェクターのようにかけっぱなしに利用するものではなく、オーディオデータを都度、書き換える方式。

上記動画は次の手順で処理を実行しています。

①通常のオーディオ波形ではなく、音声の成分を表示するスペクトログラムと呼ばれる画面表示で、特定の音成分を選別します。

②除去したい音を見つけたらその部分を選択(上記動画11秒付近)してリペア処理を実行します。(音声の特性により各種パラメータを調整します)

③除去したいノイズ成分は単にカットするわけではなく、その音が抜けた部分を他の音成分に馴染ませるために音声をリシンセサイズ(再合成)します。

絵画修復士とよばれる名画などをリペアする職人が存在しますが、まさにそのオーディオ版といったところ。ツール自体もすごいがそれを使いこなす職人の耳は完成度を大きく左右しそう。RXのリペアツールには他にも録音時の歪みを補正するDeclipや細かなデジタルノイズ修復するDeclickなど幅広いプラグインが搭載されています。

★実際にノイズ除去をしてみた前後比較イントロ

古い音源などをRXなどによるオーディオリペアによる音声修復をした上でDAWへ取込み、新たな楽器のオーバーダビングを進めて行くことが手順になります。

便利すぎるDAWのテンポ分析機能とは

ノイズ除去が済んだらいよいよこれをDAWへ取込んで、「使える部分を」確定し楽曲の再構築をスタートしていきます。デモテープにはガイドクリックやメトロノームは使用されておらずそのままの状態から他の楽器をオーバーダビングするのは難しいため、テンポマップを作り、小節を確定させることでその後の作業がスムースになります。

最近のDAWにはクリックなしの演奏からテンポを自動検出する機能が搭載。代表的なDAWソフトCubaseでは以下の手順で簡単に解析。テンポマップを作成することができます。


Cubaseテンポ検出

   ①取込んだオーディオデータを選択。

   ②プロジェクト→テンポの検出。

   ③分析ボタンを押す。

  細かな設定もできるが数秒でデモ音源のテンポを検出し、小節を割り出してくれる。演奏スタート位置を小節の頭にトリミングしておくと、その後の作業がしやすい。解析が終わると下記画像のように曲中のどの部分でどれくらいで揺れているかが確認できる。この揺れをベースに小節を確定しテンポマップが自動的に組まれるようになっている。

こういった機能もDAWベースでの音楽性制作以前の作業はとてつもなく大変だったに違いない。  

テンポ検出結果cubase

ちなみにYouTubeにUpされている(2015/9/3現在)元音源を実際に取込んだのが上のプレビューです。歌い出しから少しテンポが揺れていますが、後半は一定に保たれている。世界的なミュージシャンのリズムキープは流石(笑)。

ここからテーマの部分をトリミングして自由に配置し、他のリズム隊などをオーバーダビングしていくのがスムースな作成方法だと思います。「ピアノと歌」が同じトラックに入っていることになるので、それらのバランス調整も必要です。エキサイターやステレオイメージャーなどでピアノと歌の音像調整なども他の楽器とのミックスバランスをとりながら調整すると良いでしょう。完成させられるイメージが出来てきました。

まとめ

20年前の超絶的なスタジオワークも自宅でサクサクと編集できてしまう道具の進化にも驚きます。ノイズ除去技術も地味ながら着実に進化を続けています。時を超えて秘蔵音源をリビルドする音楽制作も面白いもの。ぜひご自身の過去のプロジェクトからオールド&ニューを感じさせる曲を作ってみてはいかがでしょうか?

著作権上で公の場での発表は難しいかもしれませんが、ジョン・レノンの元ネタを元に自分だけのコラボレーション曲を制作するのはオタク過ぎる趣味でしょうか(笑)

 

SNSでもご購読できます。

コメント

コメントを残す

*